生きてみたいって思いたいし、おいしいものはおいしい

どうでもいいことも言葉にしてみたら楽しいかも

祖父の部屋

95歳の祖父が施設に入所したので、自宅の祖父が使っていた部屋を片付けた。30年くらい前の写真、そろばん、ものさし、用途不明の工芸品、裁縫道具、使ってないハンカチ、ネクタイ、風呂敷、店名の入った爪切り、キャンディーズのトランプ、錆びたカメラ、受話器置き、などが出てきた。

見たことのない年齢の祖父の写真は、父によく似ていた。友人夫婦数名との旅行で撮ったらしいその写真には祖母も写っていた。祖母は私が生まれる前に亡くなっているので、仏壇にある写真と、祖父の部屋のテレビの横に飾ってある写真でしか見たことがなかった。集合写真でよくある長いベンチみたいなものの最前に座る祖母は爪先しか地面についてなくて、私の短足は父の遺伝とは承知していたが祖母からだと思えて少し近く感じた。おばあちゃん、短足は厳しいよ。

祖母は着物を作る仕事をしていたらしく、裁縫が得意だったと父が教えてくれた。小物を作ったりレザークラフトしたり編み物したり、手芸が好きだけどいつも独学で飽きがちな私は、もし祖母が生きていたら教えてもらえて捗りそうだな、と想像した。どんな声だろう。

ゴツめなデカい爪切りが3、4個あった。昔近所にあった美容院の名前とか、企業名が書いてある。爪切りに店名を刻むのが流行っていたのだろうか。ボールペンに刻印するみたいな感じかな。

受話器置き、初めて見た。その名の通り受話器を置く台らしい。受話器を置くってどういうこと?電話機に置くとこあるんじゃないの?と思ったがどうやら電話機に受話器を置いてしまうと電話が切れる為、受話器置きに受話器を置くことで保留するらしい。しかも受話器のスピーカー部分が当たるとオルゴールが流れて、それが保留音になるらしい。おもろ。受話器を置いてオルゴールを鳴らせて保留音にしようって発想、楽しすぎる。確かに電話の保留音はオルゴールっぽいものが多いけど、それは本物のオルゴールを鳴らしていた時代からの流れなんだろうか。知恵と工夫と技術と遊び心が伝わってワクワクした。昭和にはきっとこういう品が多くあるんだろうな。

祖父が生きてきた、私が知らない時代のことと、私が知らない祖母のことを知りたくなった。

今度面会に行ったら、なんでそろばん4つも持ってるの?って聞こ。