生きてみたいって思いたいし、おいしいものはおいしい

どうでもいいことも言葉にしてみたら楽しいかも

古着屋の出会い-前編-

旅先でふらりと入った古着屋で、常連のご夫婦と出会った。
服を漁っていると、それいいね、と話しかけられた。私の着ているカバーオールやデニムを褒めてくれた。そこから、明るくて快活な奥様と、どこから来たとか何しに来たとか、旅の話をして、服の話をして、これ似合いそうだね、と言ってくれたパンツを試着した。

正直なところ、購入の予定はなかった。古着屋の雰囲気はとても好みで、欲しい物も沢山あったが、旅先ということもあり荷物が増えるのを懸念していた。物欲を抑えて退散せねばと思っていたところだった。

ところが、試着したゆるめのパジャマパンツが超かわいかった。青×黒の太めシェパードチェックと、グレーに赤と青のタータンチェック

着ていたカバーオールが青だったこともあり、自分で言うのもあれだけど、だいぶ似合っていた。しっくりきた。パジャマパンツならくしゃっと畳んで持って帰れるし買ってしまおうかと思った。

「これも似合いそうじゃない?」と次々に乗せられて試着する。楽しい。「めっちゃ可愛いじゃん」と盛り上がる。楽しい。赤のコーデュロイパンツを履いた。腿周りブカブカが好き。ベルトで絞っても形が崩れないのも最高だ。

結局、パジャマパンツを一本諦めて、赤コーデュロイと青パジャマパンツの二本を買うことにした。しかも私にも常連さん価格で売ってくれると言う。なんてことだ。この頃には荷物のことなんてどうでも良くなっていた。

そうして会計に向かおうとしたとき、奥様が「じゃあこっちは今日会えた記念のプレゼントね」と。なんと、諦めたグレーのパジャマパンツを買ってくれたのだ。

こんなことがあるのかと、驚きと嬉しさと出会いの面白さに、感動した。店長さんに、奥様とのツーショットを撮ってもらった。なんでかハグをして写真を撮った。かなり良い写真。

内気で人見知りで話し下手の私が、初めて会った人と打ち解けて、似合うパンツ選んでもらって、プレゼント貰って、ツーショット撮るなんて、未曾有の経験にも程がある。旅は性格も変えるのか?面白すぎ。

人との繋がり乏しい私にとって、この出会いが人生経験の中で大きなものに思えて、胸が熱くて、心が躍って、とても嬉しかった。

青春18きっぷで初めて旅して、のんびり立ち寄った街で、たまたま入った古着屋で、こんな時間を過ごすとは。優しさと楽しさのかたまりみたいな出会い。

パンツが三本入った紙袋を提げて、ほかほかした気持ちで宿泊先へ向かった。