生きてみたいって思いたいし、おいしいものはおいしい

どうでもいいことも言葉にしてみたら楽しいかも

ネクタイ

もうすぐ母方の祖父の二十三回忌があるので、親戚が大集合する。久しぶりに会うのが楽しみな気持ちと、会って話すのが怖い気持ちもある。

母の父、げんちゃんは、私が保育園の時に病気で亡くなった。げんちゃんは町の水道屋さんで、町中のみんなと知り合いなくらい顔が広くて、頼まれれば何でもやってあげて、いつでもどこでも駆けつけた。昔、私の家はトイレに行くために外に出ないといけなかったけど、げんちゃんが居間とトイレの間に部屋を作って繋げてくれた。げんちゃんは猟犬を飼っていて、ジムニーに犬を乗せて出かけていた。げんちゃんは椎茸を育てていて、山へ着いて行って一緒に収穫した。げんちゃんは家族の誰よりも太くて大きい箸を使っていた。

げんちゃんが亡くなってから十数年か経ったあと、おばあちゃんに、げんちゃんのネクタイをもらった。何かにリメイクできるかもと思って数本もらったけど、結局今まで使わないまま保管していた。

それで今度の二十三回忌のことを聞いたときに、ふとネクタイのことを思い出した。げんちゃんのネクタイ、何かにして身に付けられないかな。色々考えてみた結果、ブローチにして胸につけることにした。早速、ネクタイを裁って、縫って、ミニネクタイのブローチと、リボンのブローチを作った。

これで、げんちゃんのネクタイを身に付けて出席できる。しかも私はおばあちゃんのお下がりの喪服を着るので、おじいちゃんとおばあちゃんに包まれて、なんだか嬉しい。「これ、げんちゃんのネクタイで作ったよ」って早く言いたいな。みんなと話せそうかも。