生きてみたいって思いたいし、おいしいものはおいしい

どうでもいいことも言葉にしてみたら楽しいかも

雑誌POPEYEを買った話

結構雑誌を買うタイプだった。

毎月買ってたものもあるし、雑誌はその時の趣味とか気分による出会いだと思ってほぼ一目惚れでたくさん買っていた。

一番ときめくのは出会った時で、もちろん中身も大切だけど、惹かれる表紙を見つけた時のワクワク感が特に好きだった。

 

数年雑誌を買ってなかった。気になる雑誌に出会っても、手に取って悩んで、戻していた。そういう事が何回もあったけど一回も一冊も買わなかった。じっくり読みたくて欲しくて長い時間悩むから、店員さんからしたら不審者だったかもしれない。

 

金銭的に余裕がなかった。

事実だけど必要以上にそう思い込んでいた。

今これは本当に必要なのか。この数百円は、スーパーで食品を買うために使う方が正しいんじゃないか。シャンプーの詰替、ギリギリまで粘ってるけどこれを我慢すれば買えるじゃん。

とかいう理由で、ときめいた気持ちは閉じ込めて、欲しい雑誌を何冊も見送った。

 

ひとりでいる時間が増えた。

人に会うのが急に億劫になってしまった。まぁ元々交際に積極的なタイプではないのだけど。

色々なことにやる気が出ないし働くことが難しくてずっと寝てたい。できれば一日中布団にいたい。

 

それでどうにか散歩したり暴食したりだらだらしたりしてるうちに、ふと、好きなことがあまり好きじゃなくなっていて、生活が雑になっていることに気付いて、あれ、ちょっと危ないかも?と思った。


何日間かだいぶ沈んでいた。


この思考に至るまでかなり悩んだのだが、うーん、たぶん、生きるほうがいいよねということにして、この時だけはとりあえず、それまでよりちょっとだけ、お金よりも気持ちを選ぶようにしようとしてみた。

 

コンビニスイーツを買ったり、お惣菜を買ったり、可愛い色のアイシャドウを買ったり、パン屋さんのパンを買ったり、喫茶店でモーニングしたり、映画館に行ったりした。久しぶりで、ぜんぶひとりだけど、ぜんぶ楽しかった。

贅沢かもと思いつつ、健やかに生きるため、という自分に甘過ぎる理由をつけてとりあえずやってみた。

 

少しずつ自分の時間の使い方が好きになってきた。

それでも、衝動的なのはよくないし、加えてかなりの優柔不断だから、雑誌POPEYEを買うのも時間がかかった。4回それぞれ違うお店で見つけて、都度悩んだ。他に必要な物はない?贅沢しすぎじゃない?今本当に買うべき?

読みたい。買いたい。欲しい。

旅の特集。ちょうど旅に出たいと思っていたから余計に手に入れたい。あと表紙の色がすき。

 

4回目に本屋さんで見つけた時、ワクワクした。まだときめいた。冷めていなかった。これはもう、そういうことだとニヤけながらレジに向かった。

あぁ、雑誌を買うってこういう気持ちだった。

 

雑誌をひとつ買うのにこんなに思いを馳せる奴がいるだろうか。馬鹿げていてもたったそれだけのことでも、私にとって、雑誌を買う選択ができた心の余裕がとても嬉しかったのだ。

 

我慢していれば効率的に安く生活できると思っていたけど、数百円でときめける心まで失くしてしまうのは寂しくて悲しい。

だけど、どう生きるにもお金は大事だし、贅沢のしすぎもよくないので、程よいバランスで自分のときめき欲と付き合って行きたいと思う。

 

 

数年前、仕事の悩みと金欠一人暮らしで心と体が消えかけていたときの話。

雑誌を買っただけの小さな行動だけど、あんなに感情を動かしてまで雑誌を買ったことは、私に必要で大切な記憶だ。