母の職場に新しく配属される人が挨拶に来たらしく、父とその話をしていた。
ちょっと変わった人なんだよね、と言う話。それちょっとおかしいね、長く続かないでしょ、とか。私はわざわざ首を突っ込んで「その人にもなにか事情があるんじゃない?」「もしかしたらすごく仕事できる人かもしれないよ」と言った。
顔も形も歳も知らない人を庇った。
めんどくさい。
いつもそうだ。昔から、母の発する言葉は否定的なものが多かった。
歌手を見て、あんま上手じゃないね、と言えば私は「テレビに出てこんな大舞台で歌ってることがすごいよ」と言う。
芸能人を見て、肥えたね、と言えば私は「そうかな?もしかして体調悪かったりするかもしれないよ」と言う。
個性的な人や少し癖のある人がテレビに出るのを、私は緊張して見ている。母が何か否定的なことを言い出さないか、そしたらどうやってこのテレビの中の人を庇おうか。この人のことを好きな人もいるのに。この人は頑張ってここに立っているのに。個性って素敵なのに。自分が言われたら悲しいのに。
ほっとけばいいんだ。届くはずもないかけ離れた人を庇う意味が分からない。偽善者なのかな。
いちいち、そうやって、誰かが言う誰かの悪口を、わざわざ、自分ごととして考えて、よく知らない人でも、擁護する。馬鹿みたいだ。
疲れる。
生きるということはずっと何か考えてるってことでしょ、いやだな。
頭が疲れちゃうよ。もう考えるの、いやだな。
誰かの悪口聞きたくない。悲しい。